つわりの時は吐き気がするのに、気軽に薬を飲めないから、とてもツライですよね。
バナナはそんなつわりの時におすすめの果物です。
その一方で、糖質量や太りやすさを心配する声もあります。
しかし、上手に利用すれば、必要以上に体重を増やすことなく、つわりの時の強い味方となるでしょう。
この記事からわかること
1 バナナがつわりにおすすめな理由
2 つわりの時に食べやすくなるアイディア
バナナには妊娠中に必要な栄養素がいっぱい
バナナにはビタミンやミネラルなどの栄養素が、バランスよく含まれています。その中でも、特につわりに悩む妊婦さんを助けてくれそうな栄養素は次の4つです。
バナナに含まれる注目の栄養素
・ビタミンB6
・葉酸
・オリゴ糖と食物繊維
・トリプトファン
それでは、それぞれについて詳しく説明していきます。
つわりの症状の軽減を期待できる ビタミンB6
ビタミンB6はたんぱく質や脂質の代謝を促す働きがあります。そして、不足するとアミノ酸の代謝が停滞し、うつや不眠症などの精神状態にも影響します。
そのため日本産婦人科学会のガイドラインでも、つわりの症状を緩和する目的で、ビタミンB6の投与について言及されています。
そしてビタミンB6は、肉や魚にも含まれていますが、妊娠中は一日の摂取量の推奨値が上がります。
バナナは、果物の中ではビタミンB6を多く含む食品です。
妊娠中は普段の2倍取りたい! 葉酸
妊娠中に必要な栄養素として特に有名なのが葉酸です。葉酸は「造血のビタミン」ともいわれ、赤血球をつくり出します。
また、葉酸は細胞の新生や増殖に深く関わります。
そのため、細胞分裂が活発な妊娠初期に不足すると、赤ちゃんの体に神経管閉鎖障害が発生する可能性があります。
そして葉酸は、緑色の濃い野菜や果物に多く含まれていますが、水に溶けやすく、熱に弱い性質があるため、生で摂取することがおすすめです。
ポイント
葉酸は生で摂取できる果物から取りやすい
腸内環境を整える オリゴ糖と食物繊維
最近、腸活がよく話題となっていますよね。それは体の免疫細胞のおよそ70%が腸に集中しているため、腸内環境を整えることが、免疫力を高めることに直結するからです。
そして、赤ちゃんはママの腸内環境を受け継ぐと考えられています。なぜなら、出産のときママの腸内から産道に付着した乳酸菌やビフィズス菌に触れるためです。
妊娠中に腸内環境を整えることは、赤ちゃんの免疫力を高めることにつながります。
バナナに含まれるオリゴ糖は、胃で消化されず、大腸に直接届き、乳酸菌やビフィズス菌を育てます。
また、豊富に含まれる食物繊維の働きによって、食べ物と一緒に入ってきたウィルスや細菌などの有害物質を、体外に排出します。
このため、ヨーグルトと一緒にバナナを食べるのは、とてもおすすめできる食べ方です。
心を癒す トリプトファン
あまり馴染みのない名前ではありますが、バナナには「トリプトファン」というアミノ酸が含まれています。
この「トリプトファン」は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」を脳内で作り出すのに必要な成分です。
そして「セロトニン」の働きによって、自律神経のバランスが整い、精神の安定や安眠につながります。
つわりの起きる原因はまだ解明されていませんが、ホルモンバランスの変化により、自律神経が乱れることも原因の一つ、と考えられています。
自律神経が乱れると、ストレスを強く感じたり、胃酸が過度に分泌され、心身に不調をきたします。
なかには妊娠中にうつになる人もいますが、つわりの症状が始まる妊娠初期に発症する人が多いようです。
つわりが続けばツライので、うつにもなりますよね。
そして、このうつの症状改善にも「セロトニン」が重要、と言われています。
ポイント
「セロトニン」を作り出す「トリプトファン」は体内では合成されないため食事から取らなければなりません!
妊娠中は特に心穏やかに過ごしたいですが、現実はなかなか難しいものです。
だからこそ少しでもリラックした気持ちになれるよう、工夫が必要ですね。
この他にもバナナには、むくみの解消に役立つ「カリウム」や、抗酸化作用のある「ポリフェノール」が豊富に含まれています。
どんなバナナを選べばいいの?
スーパーで売っているバナナも、少し高めのものから特売のものまで色々あります。
もし、赤ちゃんのことを考えて化学肥料や遺伝子組み換え食品に敏感になっているなら、バナナについているシールの番号に注目してみてください。
- 3あるいは4から始まる4桁の番号 化学肥料を使用した作物
- 9から始まる5桁の番号 殺虫剤や化学肥料を使用していない作物
- 8から始まる5桁の番号 遺伝子組み換え作物
これらの表示はバナナに限らず、野菜や果物に共通しているものなので、覚えておくと便利です。
毎日食べても大丈夫? 一日の摂取量の目安は?
バナナって太りそうじゃない?
妊娠初期に体重が増えすぎてしまったら、その後はいったいどうしたらよいのか、と不安になる方もいるでしょう。
じつは私も、お腹が空くと気持ち悪くなって、ついつい食べ続けてしまう食べつわりでした。だから健診では毎回体重について注意を受けて、ヒヤヒヤしたものです。
そんな食べつわりの人にとって、カロリーや糖質量はとても気になりますよね。
バナナにはたくさんのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
それは糖質が多いことです。
果物は全般的に糖質が多く含まれていますが、バナナは特に多く含まれています。
では、本当にバナナを食べると太るのでしょうか?
次の2つの要素をふまえて考えていきます。
はてな
1.バナナのカロリーと糖質量は?
2.バナナは腹持ちがいいの?
バナナのカロリーと糖質量
まず、バナナのカロリーと糖質量を他の果物と比べてみました。
食品 | カロリー(100g当たり) | 糖質量(100g当たり) |
バナナ | 86Kcal | 21.4g |
ぶどう | 59Kcal | 15.2g |
いちご | 61Kcal | 12.4g |
りんご | 34Kcal | 7.1g |
ご覧の通り、バナナは果物のなかでも糖質量が多くカロリーも高いです。
ですから果物から得られるビタミンなどの栄養素を、全てバナナから摂取しようとするのは、おすすめできません。
つぎに、ご飯やパンなどの主食と比べてみました。
食品 | カロリー(100g当たり) | 糖質量(100g当たり) |
バナナ | 86Kcal | 21.4g |
白米 | 168Kcal | 36.8g |
食パン | 280Kcal | 44.3g |
バナナ1本は、皮をむいた状態でおよそ120gなので、103Kcalほどでしょう。
白米は茶碗一杯でおよそ150gなので、252Kcalぐらいになります。
食パン1枚は、6枚切り1枚がおよそ60gなので、168Kcalぐらいです。
主食と比べると、バナナは比較的カロリーが低く、糖質量も高くありません。
バナナは腹持ちのよい低GI食品
さらに、バナナの腹持ちについて比べてみました。
腹持ちの感じ方には個人差もありますが、低GI食品は高GI食品に比べて腹持ちがよい、と言われています。
GI値とは、食品に含まれる「糖質の吸収度合い」を示すものです。
GI値の高い食品は、糖質の吸収度合いが高く、一気に血糖値を上昇させます。そして、血液中に急激に増えた糖分を処理するため、多量のインスリンが分泌されると、今度は逆に一気に血糖値が降下します。
この時に、脳が食べ物の必要として信号を出すため、空腹感を感じます。
注意
高GI食品は、満腹感を得るのも早いが、空腹感を感じるのも早い
その一方で、低GI食品は血糖値がゆるやかに上がり、ゆるやかに下がるので、満腹感が長く続きます。
GI値の比較は次のとおりです。
食品 | GI値 |
バナナ | 55 |
白米 | 84 |
食パン | 91 |
GI値は次のように分類されています。
- 高GI食品 70以上
- 中GI食品 56~69
- 低GI食品 55以下
ご覧の通り、白米や食パンは高GI食品の仲間であるのに対し、バナナはGI値が低く腹持ちのよい食品です。
その他の食品とも比べてみましょう。
種類 | 食品 | GI値 |
高GI食品 | チョコレート | 91 |
高GI食品 | じゃがいも | 90 |
中GI食品 | パスタ | 65 |
中GI食品 | かぼちゃ | 65 |
中GI食品 | 生そば | 59 |
低GI食品 | さつまいも | 55 |
低GI食品 | 牛・豚ロース肉 | 46 |
低GI食品 | たまご | 30 |
つわりの時にフライドポテトにハマった、という話はよく聞きます。しかし、じゃがいもは高GI食品なので腹持ちがよくありません。
また、フライドポテトは油や塩分を多く含んでいます。
その一方でバナナは、塩分の排出を促す「カリウム」も豊富なので、フライドポテトばかり食べてしまう人は、バナナに置き換える日も作ってみてください。
このように、バナナは相対的に見れば、太りやすい食品ではありません。
しかし、どんな食品でも食べ過ぎは逆効果です。
注意
一般的にバナナの適量は1日1本と言われています。多くても2本までがよいでしょう。
夜中にバナナを食べても大丈夫?
つわりの時に最もつらい時間帯として、夜中や寝起きと答える人も多くいます。特に吐き気で眠れない人の中には、不眠に悩まされる方もいるでしょう。
そんな時は、たとえ夜中であってもバナナを食べて大丈夫です。
先ほども記述したように、バナナに含まれる「トリプトファン」が「セロトニン」を脳内で作り出し、「セロトニン」の働きによって自律神経が整い、安眠へとつながる効果が期待できます。
おすすめ
バナナをベットの近くに置いておく
いつでも手軽に食べられるバナナは、ベットの近くに置いておくと便利です。
夜中に食べられるのはもちろんですが、朝の寝起きが一番つらい、という人にもおすすめの対処法です。
朝、寝起きの時に空腹でつらくなる人は、枕元にバナナを置いておき、一口食べて落ち着いてから動き出すのもよいでしょう。
バナナアレルギーがあるって本当?
少し意外かもしれませんが、バナナなどの果物からアレルギー反応が起きる人もいます。
つわりの時は、常に吐き気を感じたり気分が優れないので分かりにくいですが、バナナを食べた後に次のような症状を伴う場合は注意が必要です。
注意
・皮膚にかゆみやじんましんがあらわれる
・血圧が下がってクラクラする
・息苦しくなる
バナナアレルギーでアナフィラキシーショックが起こる可能性もあるそうです。
気になる症状のある方は、いったんバナナを食べることはストップして、医師に相談してみることをおすすめします。
また、バナナアレルギーを持つ人はアボカドやキウイフルーツやマンゴーなどの他のフルーツにも反応を示す場合があります。
アレルギー検査を希望する場合、皮膚科や内科や耳鼻咽喉科など複数の診療科が窓口となっています。
ただし、アレルギーに対応していないクリニックもあるので、事前にホームページで確認してから受診してください。
つわりを軽くする食べ方とは?
吐きつわりの人も食べつわりの人も、空腹状態は吐き気を増し、気分を悪くするようです。かといって、無理にしっかりと食べたり、食べすぎたりしても、胃に負担がかかって逆効果です。
ポイント
つわりの時は、1回の量を減らし、分割して少しづつ食べること
なかには赤ちゃんのことを考えて、きちんとマニュアル通りに生活しようと頑張ってしまう人もいるでしょう。
しかし、つわりの時は1日3食を無理に守ろうとせず、食べられる時に食べることを優先してください。
準備しておくと便利! 冷凍バナナ
小分け食として便利なのが冷凍バナナです。
準備はかんたん!皮をむいて一口大に切ったバナナを、保存袋に入れて冷凍するだけです。
つわりの時に「アイスだけは食べられた」や「氷をずっとなめていた」という声をよく聞きますが、市販のアイスを食べるより断然ヘルシーですし、もちろん氷よりも栄養があります。
また、凍っていると次のような効果も期待できます。
- 保存期間が1か月ほど伸びる
- においが減る
- ポリフェノールが増えるという研究結果がある
そして冷凍バナナは、そのまま食べてもおいしいですが、スムージーなどにアレンジすれば、さらにタンパク質など必須の栄養を同時に取ることができます。
なにを食べても吐いてしまう人には?
吐くことを恐れて食べずにいるより、食べて吐いてしまった方が楽になる、というケースもあります。
たとえ食べてすぐに吐いてしまっても、吸収されている栄養や水分もあるはずです。
じつは、妊娠初期の摂取カロリーの推奨値は、通常の摂取カロリー+50Kcal程度です。
つまり、いつもの食事にバナナを半分プラスしたぐらい、となります。
だから「しっかり食べなくちゃ!」と焦らずに、食べられるときに食べましょう。
おすすめ
吐くことを恐れないで済むように、吐いても問題ないものを食べる
また、吐いてしまった後は、マウスウォッシュで口の中をサッパリさせるとよいでしょう。
ヨーグルトだけではない! バナナのアレンジレシピ
じつは、バナナはいろいろな食材と相性がいいのです!
特にスムージーにすれば、緑黄色野菜とも合わせることができます。野菜嫌いの人も、甘みをつければ食べやすくなりそうですね。
さらに、ねっとりとした食感のバナナから作るスムージーなら、のどの通りがよく、水分も含まれていて、吐いてしまったとしても比較的ラクに出せそうです。
小松菜とバナナのスムージー
(一人前)
- 冷凍バナナ 1/2本
- 小松菜 3枚
- ヨーグルト 大さじ1
- 牛乳 100cc
- きな粉 大さじ1
すべての材料をミキサーに入れて、スイッチを押すだけで出来上がり!
小松菜から鉄分を、ヨーグルト・牛乳・きな粉からカルシウムとたんぱく質が取れて栄養満点です。
きな粉の風味が効いていて、お砂糖を加えなくても十分おいしいですよ。もし甘みが足りないと思う方は、冷凍マンゴーや冷凍パインを加えてみてください。そうすれば、しっかりと甘みがつきます。
また、小松菜はビタミンCを多く含んでいますが、ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、茹でると流れ出てしまいます。その点、生で食べればしっかりと吸収できそうですね!
小松菜をサラダ用ほうれん草に変えることもできます。ただし、ほうれん草にはシュウ酸という、苦味や渋味の元となる成分が多く含まれています。ですから生で食べる時は、サラダ用を選ぶ方がよいでしょう。
ミキサーやブレンダーのない人でも、保存袋を利用すれば、簡単にヘルシーな手作りアイスを楽しめます。
豆乳とバナナのアイス
(作りやすい量)
- バナナ 2本
- 無調整豆乳 100cc
- はちみつ 小さじ1
すべての材料を保存袋に入れ、手でよくもみ、そのまま冷凍するだけで出来上がり!
豆乳はタンパク質と鉄分を豊富に含んでいるので、とてもバランスのよいアイスです。
このレシピでは無調整豆乳(砂糖や食物性油脂が混ざっていないもの)を使っているため、はちみつを加えました。
砕いたアーモンドをトッピングしても美味しいですよ。
とっても簡単なので、小さなお子様と一緒に作れます。
はちみつをメープルシロップに変えて、幼児のおやつとして使うこともできます。
アボカドとバナナのアイス
(作りやすい量)
- バナナ 2本
- アボカド 1個
- メープルシロップ 小さじ1
こちらもすべての材料を保存袋に入れて手でよくもみ、冷凍するだけです。
乳製品の匂いが苦手!という方や、乳製品でお腹の調子を崩しやすくなる、という方にはおすすめのレシピです。
また、写真のような製氷皿に入れて凍らせれば、ひとくちアイスになって少しずつ食べることができます。
アボカドとバナナの組み合わせで葉酸をたっぷり取ることができますね!
変色が気になる方は、レモン汁を少し加えるとよいでしょう。
まとめ
- バナナは妊婦さんに必要な栄養がつまったおすすめの食品で腹持ちもよい。
- つわりの時は1回の食事の量を少なめに、少しずつ分けて食べるとよい。
- バナナをスムージーやアイスにアレンジすれば、食べやすく栄養価も高い。
つわりの時期はとてもつらいですが、ずっと続くわけではありません。
乗り切った先には、赤ちゃんとの感動的な出会いが待っています。
つわりで悩む日々が早く終わり、赤ちゃんとの忙しい日々を想像しながら、楽しくマタニティライフを過ごせるといいですね。